僕の愛した生徒
夏休みも残り2日となった土曜日。
僕も奈菜も部活は休み。
僕たちは少し遠くまで出掛けた。
僕の車の助手席には頬を緩ませっぱなしの奈菜が座っている。
「何気に先生と出掛けるのって初めてだよね?」
「そうだな」
「何か緊張しちゃう」
はしゃぐ奈菜の手には奈菜の好きなミルクティー。
その隣で僕はハンドルを握る。
そして
車は三時間ほど走らせた所で目的地に到着した。
そこは奈菜が行きたいと言った動物園。
奈菜は車を降りると、僕の数メートル後ろをついて歩き、
「何でそんな後ろを歩くんだ?」
と僕が振り向くと
「だって…先生と並んで歩いてる所を誰かに見られたら困るもの」
行き交うカップルを羨ましそうに見ながら奈菜は言った。
「それじゃあ、一緒に来た意味ないだろ?
その為にわざわざ学校から遠い場所を選んで来たんだからさ」
僕がそう言うと、奈菜の顔は
パァッと明るくなって、
弾ける笑顔で、僕の横に小走りでやって来た。
初めて
奈菜と並んで歩く青空の下。
僕の隣を歩く奈菜は少しぎこちない。
「奈菜?」
僕は不意に奈菜の名前を呼んでみたくなった。
「なに?」
奈菜は照れくさそうに僕を見上げる。
「何でも無いけど呼んでみた」
僕がそう言って奈菜に笑いかけると、奈菜は
「変な先生」
と首を傾げて
再び、前に向き直って一緒に歩いた。