AL†CE!
「もしもし紗和?…うん、うん。あぁ、平気」
「アリス!」
「そんなことないよ?…ははっ…うん」
ダンッ!ガシャンッ_
佐柚のうすピンクの携帯が床におちる。
佐柚は胸ぐらを掴まれ、壁におしつけられた。
「…って!…ンにすんだよっ!」
「調子乗んじゃねぇぞ、あァ!?いばりくさんのは返すもん返してからにしろや」
「…放せ」
「返事がねぇなあ、アリス!」
耳元で大木が汚らしく叫んだ。
部屋にいる女達は、佐柚のことを全く気にしていなかった。
ここでもめごとは、日常茶飯事なのだ。
「…放して」
《もしもし!?ちょっと、佐柚!?大丈夫!?》
落ちて開いたままになっている佐柚の携帯から、くぐもった紗和の声が聞こえてくる。
大木を押しのけ、携帯に手を伸ばそうとした佐柚をもう一度壁に強く押しつけ、大木が携帯を拾った。
ブツッ
「佐柚だとよ。誰のことだろうなぁ?ここにいる間、お前はアリスだ!従えないなら辞めっちまいな」
「…くだらねぇ。コソコソコソコソ商売するしかない店のくせに!堂々と名前も名乗れやしない。本当こんな店…金絡みでなきゃ近寄りもしないよ」
「くそっ!」
大木は乱暴に佐柚を放した。
「お前みたいな奴とっとと金返して、消えろ!」
「…こっちのセリフだよ」
佐柚は大木から携帯をひったくり、開いたスクールバッグに乱暴に投げつけた。