AL†CE!
消臭剤なのか、女達の香水なのか、花のような薬のような、強い匂いがする。
佐柚はトイレにいた。
アイラッシュもライナーもリップも、私生活では絶対に使わないような派手なものばかりだ。
金髪をツインテールにして逆毛をたてる。
ブロンド。
今日は、『アメリカンガール』だった。
鏡に写った自分の姿を見て、佐柚は吐き気がした。
「美しい」とみんなに噂されるほど、果たして自分は綺麗なのだろうか。
鏡には、宮高のものではない、マリン仕立ての制服に身を包んだ、金髪の少女が写っている。
それが誰なのか、佐柚にはわからない。
スカートは不自然なまでに短かった。
かわいらしいチャイムが鳴った。
そのチャイムをきいて、佐柚は急いで化粧道具をかたづける。
洗面台の鏡をあけて、裏にある収納棚にポーチごと入れた。
『アリス』と書かれた小さなかごに、出勤表をおき、鏡をしめる。
鏡の向こうの少女に手を振り、深く息を吸って、トイレを出て行った。