AL†CE!

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「功お前時間大丈夫なの?」

大地の腕時計は、もう17時30分をまわっている。
2人はまだイメクラのビルの前に立っていた。

「まだ大丈夫。あいつ、大丈夫なのかなぁ」

功がビルを見上げた。

さっきから何人か、若い男や仕事帰りと思われる、スーツ姿の男などが、ちらほらと中へ消えていった。
みな2人を少しは気にするが、何も言わずに通り過ぎていく。


ガチャン


戸が開く音がして、2人は入口に目を向けた。

男が、両手にゴミ袋を抱えて出てきた。

大地は少し慌てた様子で功の腕を引き、その場を去ろうと試みる。

制服姿で、ここに立っているのは、まずいだろう と良心が悲鳴を上げた。

サッカー部の顧問に知られたら…。


しかし、遅かった。


「何か御用ですか?」

入口横の青いバケツにゴミ袋を押し込みながら、男が2人に聞いた。

調子のない、低く冷たい声だった。

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