クイヌキヤ
「過去に縛られた人間は世の中にたくさんおる。

 みんな、それぞれの悔いをもっておる。

 悔いというものの形を知っておるか?

 悔いというものは、
 
 木で出来た先の尖った杭(くい)に形が似ておる。

 お前さんも、そのクイによって、

 過去に縛られておるんじゃ。

 そう、お前さんの胸の真ん中に、

 クイが刺さっておるのじゃよ」


「だったらそのクイを抜いて下さい」


「お前さんのクイを抜くことなんぞ、たやすいことじゃ。

 じゃがな、

 クイの無くなった人間は、

 胸にぽっかりと穴をあけたまま、

 次のクイを見つけるまで漂うことになるぞ?

 なにせ、
 
 人間はクイがあるからこそ

 一つの場所に留まっていられるんじゃからな。

 それでもクイを抜くのかい?」

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