虹が見えたら

夕飯時になると管理人室にやってきていた学生たちもしぶしぶそれぞれの部屋へ帰っていった。


伊織は真樹の身の回りの世話と寮の内外の点検を済ませると、いったん自分のマンションへもどっていった。

伊織から電話をもらったなるみはすぐに管理人室へ入った。



「ごめん、世話かけてしまって。」


「気にしないで、名誉の負傷なんですからね。
交通事故ってお兄ちゃんからきいたときはびっくりしたんだから。」



「病院へ運ばれたときは、正直いうとさびしかった。
すぐになるみちゃんが帰ってきてくれないかなって思ったよ。
自分が仕事のときはさ、2日とか平気で家あけてるくせに勝手だよね。

せっかく帰ってきたと思ったら仕事の話を切りだすしか、直接話ができないのもつらかったなぁ。」



「仕方ないでしょ。真樹さんのファンは学院内にはとくに多いですから。
私のように地味に生きてる娘には気を遣ってくれなくていいんです!」



「手厳しいね。でも妬いてくれてるならうれしいかな。
あ、その包みが僕へのお土産だったり?」



「うん。また子ども扱いされちゃうかもしれないけど。
地元のマスコット人形だから・・・。
ここにいっぱいいろいろみんな置いていってるしね。」



「おっ・・・名前入りだ。こりゃ、いっちばん入口入った目立つとこに置いておかなきゃね。」



「や、やだ。そんなことしたら、噂になって先輩たちからいじめられちゃうぅ!」


「そんなことないって。
僕たちが家族なのは寮生の知るところなんだからさ、よかったですね~とか言ってくれるんじゃないの。
なんか親父みたいだけどね。あはは。」



「あ、やっぱり困る。他の人形があるとこにこっそり飾るから返してください!」


「だ~め、もうもらったんだから。
ほしいなら力づくで取ったら?あははは。」






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