虹が見えたら

なるみは思うように移動できない真樹から人形の箱を横取りするのは簡単。っとばかりにいったん箱ごと両手でつかんで離れようとすると真樹の足のギブスでつまずいて逆に真樹の体の上にひっくり返ってしまった。


「あっ、大丈夫ですか?足は?」


「足は大丈夫だけど、体は大丈夫じゃないみたい・・・」


「ええっ!どこか打ったの?どこっ?」


「胸をぶつけてしまったからね。おかげでこんなふうになってしまう。」


真樹はなるみが起き上がろうとする前に腕をまわして抱きしめた。

「きゃあ!」


「なぁ~~~んてね、こんなふうにならないようにとくに好きでもない男には近づかないようにね。」


真樹は笑いながらなるみを押し返した。


なるみはドキドキしながらも、少し悲しい気がした。
きっと私が避けていたから・・・だから?


「お茶いれてきて。
伊織のいない間にお土産のお菓子を食べよう。」


「はい」


なるみがお茶の用意をしているのを見ながら、真樹は体を起こしていた。


((ふう・・・なんとかいい人でいられたかな。
ずっと避けられるのはもう耐えられないからなぁ。))



茶菓子を食べながら、なるみは真樹の代わりに書類を届ける相手先のことを質問した。


「何ていう学校ですか?私が届けられるってことは近いんですよね」


「ああ、城琳学院って隣町に入ってすぐのところの男子校だよ。
あ、男子校っていっても職員は女性もいるし、話をするのは事務室だと思う。

昔は不良が多くて荒れてたらしいんだが、今は優秀な子が増えて進学校として頭角を現したってとこだ。
それで、もっと生徒を広範囲に募集したいからって、うちのような学生寮を建てるらしい。」



「えっ・・・真樹さんもしかして、男子校の管理人になっちゃうんですか?」





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