虹が見えたら

なるみが心配そうな顔になったので、真樹は面白がって話を続ける。

「男どうしの話をするっていうのも、楽しいかもしれないね。」



「ダメです。どうしてもっていうなら夜はここか、ここがダメならマンションにもどってきてください。」


「なるみ・・・。ごめん、ウソだよ。
男子校の管理人さんは学校側でもう決まってるから。

僕はどこにも行く気はないよ。
行くとしたら、なるみちゃんがいい人と結婚して家庭をもったらかな。」



「管理人さんやめちゃうんですか?」


「そうだねぇ。重役って立場の人はもともと僕がここの管理人を自らやっているのは反対だからね。
小さな事務所なのに、本社に居ろってうるさいかな。」


「私のせいで怒られてるんですか?」



「ん?いいや。
もしそうだったら、最初から君に手紙なんて出さなかったよ。
肩書きなんていくらでも書き変えればいいだけさ。
なるみちゃんの保護者になりたいと思ったのは、僕個人の意思だからね。」



「最初から社長だってわかっていたら、愛人になった方がいっぱいお金をまきあげることができたかもしれないわ。」



「あははは。そういう手もあったかな。
でも、そういうのは、なるみちゃんが学校卒業してたら・・・の話だね。
権力やお金で女性を買うのは嫌だな。

実質、なるみちゃんからしたら僕がお金を支払ってる立場である以上、買われてる気持ちなのかもしれないけどね。」



「そんなことない!そんなことないですって。
お土産買ってきて、こうやってお話してお茶飲んで・・・こんな時間がいちばん好きだから。」



「うん、僕もこういう時間好きだよ。
あれ・・・そろそろなるみちゃんも寝ないといけない時間だ。
明日の荷物はここにあるから持って帰って。
それと明日よろしくね。

わからないことやトラブルになりそうだったら携帯で電話してきて。
僕が説明するから。
あとは・・・えっと、少しだけ肩かしてくれる?
寝床の前まででいいから。」
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