虹が見えたら
真樹の顔がさっと近付いて、なるみは唇を塞がれてしまった。
大人のキスの時ほど長くなく、いとおしそうに真樹はつぶやいた。
「ほんとは君に手紙を送る前から、君を知っていたんだ。
お父さんのお葬式のときなんか、走っていって抱きしめたかったくらいさ。」
「えっ・・・」
「伊織から、君の兄さんからなるみを守ってやってくれないかって言われたときは信じられなかったけれど、ほんとにうれしかった。
いっしょに居られると思うだけで・・・でも保護者の位置はきついよね。あはは。
こんなにうろたえてる自分に驚いて、何とかしなきゃなんて思って。
それで、なるみを怒らせて。
最初から素直に言っておけばよかったよ。
君が好きですって。」
「あの・・・私は。」
「早いと思うなら好きにしていいよ。
警戒しないでくれなんてもう言えない。
逆に、警戒もされない家族でいる方がつらくなったからね。
なるみが誰を好きになろうと、もう咎めたりしない。
そのかわり、僕なりに愛することにしたんだ。
明日は、いや、ずっと守るからね。
さぁ早く部屋にもどりなさい。
でないと僕はもっと何かするかもしれないよ。
城琳学院のケーキ屋さんはかなりの味だね。
行くなら今度は2人で行こう。沢井を驚かせにね。」
「真樹さん!あ・・・もどります。ごちそうさまでした。」
なるみは自室にもどるなり、胸を押さえてベッドに倒れ込んだ。
((みんなバレバレだったんだ。
それに、私のこと好きって。
前にもキスされたのに、今日の方がこんなにどきどきするなんて。
私どうしたらいいのかな。
お兄ちゃんとこに転がりこんだ方がいい?
でも、お兄ちゃんだって付き合ってる人がいるかもしれないし・・・。
やっぱりここに居る。
大学のこともあるし、真樹さんが管理人だし・・・。
保護者だし・・・恋人だし・・・恋人?
私、なんだかおかしい。だめだめ、明日はお仕事なんだから足をひっぱらないようにがんばらなきゃ!))