虹が見えたら

なるみはちょっとふくれっ面になってつぶやいた。


「どこがいいかと聞いたのに、一目ぼれとかっておかしいです。
真樹さん、私に何か隠しているんじゃないんですか?
ただ好きだからをすべて信じるほど、私はもう子どもじゃありません。

生意気いってごめんなさい。
私は決めた人を強く思えるほど育ってないんです。きっと。
勉強します。じゃ・・・。」


なるみはそそくさと部屋にもどってしまった。



「しまったな・・・。さっきの電話のせいで素早い判断できなかった。
どこがなんて言えないって。
いっしょに暮らして、話して、泣いて、笑って。
なるみはもう僕の生活そのものなんだよ。

あっちに行ったらさびしくておかしくなりそうな気がする。」




1週間後、真樹は直樹の会社の社員3名とともに、アメリカへと出発した。
そして、伊織は直樹の療養している須賀浦本家へと行ってしまった。

城琳学院の仕事については伊織と沢井の間で話が進んでいき、届ける書類があるときはなるみが沢井まで届けるようになった。



なるみは真樹が側にいないことで、沢井がそれにつけこんでくるのではないかとも考えていたが、沢井は仕事に関しては決してプライベートを持ちこまず、それでいてなるみにも常に優しく、丁寧に説明してくれた。


逆になるみにとってはそれがさびしく感じるときもあったくらいに。



城琳学院の寮の工事も内装にかかる頃、なるみは卒業式を迎えた。



「あっ・・・真樹さんからのメール」


『おはよう。卒業式の朝だけど元気かい?
お腹の調子悪くなったりしてない?
いっしょに卒業記念のお祝会したかったのにーーーーー!

グチばかり出て来そうなんでとりあえずお祝だけ。
卒業おめでとう。』



なるみはやっと高校を卒業できた達成感と同時に真樹への感謝の気持ちでいっぱいになった。
帰宅すると、虹色寮で先輩たちがなるみたち卒業生を祝って食堂でパーティーが行なわれた。
< 132 / 170 >

この作品をシェア

pagetop