虹が見えたら
なるみは、その医者の名札をチラと見て質問した。
「あの、なるみ先生って・・・」
「君がなるみちゃんだね。
真樹が君の話をよくするから俺は迷惑している。」
「・・・ええっ!!」
「鳴海裕輔。真樹とは高校で知り合った。
坂部伊織と同じく、うちも須賀浦家の執事の家だった。
でも、俺は命令されて動くのが嫌いなんで、須賀浦家に仕えずこの通り、医者になった。
で、なぜか真樹の会社に出入りしている。
ちなみに俺には妻子がいる。
だから君が俺に手を出されて、『鳴海なるみ』になることはない。あはは」
「おやじギャグですか?」
「いや、そういうわけじゃないけど。
会ったら言ってやりたかった。」
「まっ・・・」
「冗談はさておき、君に真樹のことで頼みたいことがある。」
「あいつ、俺がここに来る前に貧血を起こした。
過労と栄養不足が原因だと思う。
だから休ませることと、仕事の途中で食べられるお弁当でも届けてやってほしい。
できれば野菜を多くいれてね。
あ、それは伊織に頼むといい。
君には、その弁当を届けて、あいつに食わせてやってほしいんだ。
真樹は学生のときから、何かに集中すると飯を食わないからさ、わかったときには病院に担ぎ込まれたりしてたんだ。」