虹が見えたら

なるみはそんな真樹の話が頭には入らず、指輪を見つめると手が震えた。
それに気付いた真樹はなるみの震える手をつかんで


「ごめん、困らせるつもりはないんだ・・・。」


「あ、ち、違うの。
指輪はすごくうれしい。」



「え・・・?」



「うれしい分だけ心配なの。
いくら郁未くんが会社を引き受けてくれるにしても、教える量ってたくさんあるんでしょう?
私なんかにかまって休憩する時間がなくなっちゃったら、ほんとに真樹さんが取り返しのつかないことになっちゃう。」



「それは違う。
これでも味方は多いと思うんだ。
郁未くんは若い。でも、彼はやっぱりあの人たちの血をひいてるっていうか、ビジネスには向いてるんだよ。
のみこみも早くて、真剣にいつも取り組んでくれているから、こっちも教えがいがあるくらいだ。

それとね、体は疲れてるけど、なるみのことを考えられるっていうのはストレスを解消してくれるよ。
指輪を選ぶときは迷いに迷ったけど、楽しかった。」



「もし、私が受け取らなかったら・・・なんて考えなかったの?」




「考えた・・・。考えたけど、相手にされなくても指輪は渡せる立場にいるんだって思ってた。」



「相手にされないなんて・・・それは私のセリフよ。
直樹さんの会社に出向いてから、話もほとんどできなかったし、寮にもどってきてもさびしくて。
あ、寮のみんなもおかえりって真樹さんのお迎えがないとさびしいって言ってるわ。」


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