虹が見えたら
恋焦がれて
早いもので、なるみは短大の教育実習も終え、残すは就職のみとなった。
なるみの場合、その就職先も花咲保育園の院長からの熱いラブコールがあり、学校では卒業を待つのみである。
しかし、なるみは1つどうしても心配で仕方がないことがあった。
もう、慣れ親しんだ虹色寮には住めないのだということ。
これからは一人暮らしをするか、伊織と住むか・・・それとも・・・?
指輪をもらったときは、なりゆきで面倒みるなどと簡単に言ってしまったが、落ち着いて考えれば、真樹は独身で学費と生活費の面倒がなくなってしまえばなるみとの接点はもうなくなってしまう。
もちろん、育ての親ということではあるが、それならなおのこと自分は巣立っていかなくてはならないのだろう。
真樹が男避けの指輪をくれたのではなく、正式な婚約指輪をくれたとしたら話は別だったのだが・・・。
あれからお互い忙しくて、落ち着いて話をすることもなく、就職のことも花咲保育園の桐谷や、洋菓子店で顔を合わせる沢井に相談したくらいだった。
伊織から、直樹の容体がいい方向へと向いていることを聞き、同時に大崎郁未が直樹の会社をいくつか試験的に任されることになるらしい。
((郁未くんがんばったんだ。
考え方は少しゆがんでいるかもしれないが、息子がお父さんを超えるきっかけはどこの家庭にもあるはず。))
郁未を見ていると、自分も真樹のところから巣立たなければならない気持ちにさせられる。
しかし、なるみが真樹を超える必要性なんてどこにもないのにどうして?
そんな混乱した頭を押さえながら、なるみは虹色寮に帰宅した。