虹が見えたら
するとなるみは、ぷっと吹き出して笑いだした。
「もう真樹さんのあまえんぼさんなところはバレバレですよ。
最初はわざとやってるのかと思ったけれど、最近天然だってわかってきました。
だから、突き放さないで。お願いです。」
笑ったはずなのに、うつむいてしまったなるみを真樹は思わず抱きしめて言った。
「どうして君はそうやって僕をダメな大人にしちゃうんだ?
なるみは若い。学校も通えるようになって、いい友達や先輩に囲まれて、どんどんいろんなことを経験していかなきゃ。
僕のことなんか気にしないで、どんどん楽しんでいけばいいのに。
かまったりしないで、鬱陶しく思ってくれればいいのに、そんなにかわいいこと言って僕を・・・。
ごめん、まだ早い。
僕は君の保護者で・・・今はそうでなきゃいけない。わかって・・・。」
「うん。
言おうとしてることは何となくだけどわかった。
今は、真樹さんを苦しめちゃうんだよね。
よかった、嫌われてるんじゃなかった。
私のこと、とっても考えてくれてのことだもんね。
うれしいって思わなきゃ、バチが当たるね。
さぁ、食べましょ。
食べ終わったら、私すぐに準備して高倉くん家に行ってくるね。」
2人は黙ったまま朝食を済ませた。
そして、なるみはさっと後片付けをして、すぐに自分の部屋へともどっていった。
真樹はしばらくまたベッドに入って横になったが、眠れなかった。
((伊織の策略だとわかっているのに拒むどころか、どんどんあまえてしまうなんて。
ダメなのは俺なのに、なるみのせいにして、なんて卑怯者だ。))
その後、階段を駆けおりる音が聞こえ、真樹にはそれがなるみの足音だとわかっていた。
音が消えたとき、真樹は胸騒ぎがするようで、ベッドから降りていた。