虹が見えたら
高倉家に着いたなるみは祐司と剛史の兄弟に迎えられた。
両親は知り合いの結婚式に出席していて留守だということだった。
祐司の兄の剛史は初めてなるみを見たときにはなるみの姉の冬美と間違えて抱きついてしまったが、その後はなるみに謝罪をし、なるみが掃除に来ていると、本当の兄のように優しく挨拶をしたり、世間話をしていた。
「なるみちゃんが持ってきてくれた冬美の写真を見てるとさ、今のなるみちゃんによく似ているね。
やっぱり姉妹なんだなって思う。」
「どれどれ・・・ほんとだ。でもお姉さんの方が華奢というか、か細い感じだね。
それに比べて山田はさ・・・」
「ストーーップ!その先は良くないことを言うんでしょ。
山田は太いとか。」
「い、いや、俺はか細いよりも、はつらつと健康的な方がいいと思うから。
元気に笑ってる山田は十分かわいいし。」
「えっ・・・高倉くんったら。」
「おい、なるみちゃんが困ってるだろ。
そうだ、祐司。駅前のケーキ屋行って、ケーキ買ってこいよ。
ほら人数分以上金渡しとくから。」
「あ、わかったよ。
じゃ、ちょっと行ってくるね。」
「うん」
祐司は剛史に言われて駅前にケーキを買いに出た。
そして、なるみは冬美の日記帳を剛史に見せようとしたときだった。
「そういうのはもういらないよ。」
「え、お姉ちゃんの日記、見ないんですか?」
「写真も日記も、冬美の思い出の品はすべてなるみちゃんが持っていてくれる方がいいと思うんだ。
じつはね・・・冬美は亡くなる1か月くらい前かな。僕に別れをきりだしたんだ。」
「ええっ!」