虹が見えたら
「僕はもちろん別れる気なんかなかったんだけどね。
電話してもメールしても出てくれなくなってさ。
少し前までは僕が誘えばとてもうれしそうにどこへでも着いてきたのに。
でも、それももう本人がいなくなってしまった今は関係ないこと。
みんなきれいな思い出になって、僕が冬美を愛していた事実だけが残った。
そして、今・・・偶然にも、冬美の妹である君がきてくれてる。」
「え?あの・・・剛史さん・・・?」
「祐司のいうとおり、健康的で元気な笑顔の似合う女の子の方がかわいくていいね。
かわいいと思ってるうちにすぐにきれいに成長するし。ふふっ」
なるみは剛史の言葉をきいて少し恐ろしくなって、座ったまま後ずさりした。
すると、冬美の日記帳が足にひっかかってあるページが開いた。
『剛史さんは私に隠れていろんな女性とつきあっていた。
私は見てしまったのだ。
彼が友人に得意そうに話している光景を忘れられない。
彼がほしいのは、私ではなく、父の会社と財産なのだ。
父が元の部下に資金援助していることを知って、我が家には資産があると思ったのだろう。
それを元手に事業をしたいだけで、成功しても失敗しても、私は捨てられる運命にあるんだとしゃべっていた。・・・・・』
「お姉ちゃん!そうだったの。
剛史さん、うちにはもう財産なんてないですよ。
負債抱えて会社はつぶれてしまったんですもの。」
なるみがそう叫ぶと、剛史はニヤニヤ笑いだした。
「なるみちゃんは何にも知らされていないんだね。」
「えっ?」
「僕なりに調べさせてもらったから、僕は今の君の身分を知っているんだよ。」
「私の身分?」
「そう。君の父親と姉は死んだ。そして、君は今、どこの家の世話になっているのかな。
ものすごい総資産を抱えているお家柄のお嬢様・・・。」
「な、何をいっているんですか?私は寮の管理人さんの・・・」