虹が見えたら
なるみたちの前には真樹と祐司の姿があった。
「祐司、なんで戻ってきた?」
「駅前のケーキ屋が休みなのは俺も昨日、広告を見て知ってたんだ。
それで、北のケーキ屋へ行こうかと駅前に自転車置いてたら、真樹さんに会って、お菓子ならあるって。それで・・・」
「真樹?おわっ、ぐぅ。ああっ!!」
真樹は剛史の顔を右足で思いきり、蹴り飛ばし、剛史は窓際へと吹っ飛ばされた。
そしてすぐになるみを救いだすと、自分のジャケットをなるみにかぶせた。
「さる筋からの情報なんだけどね、昔冬美さんのストーカーだった男が、最近TSwコーポレーションの受付嬢に通りかかりを装って会社のことや須賀浦直樹のことを聞きまわっていたらしい。
犯罪のにおいがプンプンするんでね。
だけどね、そちらの会社となるみは一切関係がない。
堂々と会社で聞いてもらってかまわないよ。
須賀浦真樹は、妾腹の息子でとっくの昔に勘当された男だからね。
理由もいっておくとね・・・君のような男を何人か死ぬ寸前にまでつぶしてやったのさ。
じゃ、今度は足じゃなくて、手を出してみようか?」
「ひぇ・・・す、すみません。
な、何も知らずに申し訳ない。
あ・・・ああ・・・祐司、すまん。」
剛史は必要最小限の持ち物を持って家からそそくさと走り去っていってしまった。
残された祐司は膝をついて、真樹に頭を下げていた。
「兄さんが・・・申し訳ありませんでした。
それと、兄さんを止めてくださってありがとうございました。
最近、ときどき突然ニヤニヤしてるときがあって、薄気味悪かったんです。
理由がやっとわかりました。
こんな恐ろしいことを計画していたなんて・・・。
弟の俺を騙してまで、こんなことを。
山田、ごめん。俺、兄さんのいうこと聞かずにずっとここに居ればよかった。」
なるみはまだ怖くて声が出なかった。
真樹の腕をぎゅっとにぎった。
「もう、いいよ。なるみは君のせいじゃないと言いたいみたいだよ。
とにかく、もうここへは来させないけど、高倉くんが何か用事があったら管理人室までおいで。」