虹が見えたら

祐司の母が持ってきたお菓子を持って帰るように言う以外は真樹はなるみに何も言わなかった。
なるみは、祐司の母がきてくれてよかったと思った。


自分の部屋に入って早速、もらったお菓子を食べていると呼び鈴が鳴ったのでなるみはドアの前で誰か確かめた。


やってきたのはなるみと同じクラスの田波さやかだった。


「こんにちわ!」


「めずらしいね、どうしたの?



「うん、なるみに相談にのってほしいと思ってきちゃった。」


「相談?」


「この寮で働いてる人で、背が高くてクールな感じでとにかくすっごい美形なお兄さんがいるでしょう?」



「え・・・すっごい美形なお兄さんって・・・管理人さんのこと?」



「管理人なの?あの人。」



「それで相談って・・・」



「じつはね。4,5日前だったか、町で買い物して家に帰る途中に、暴走族風の男3人にからまれたの。
それで、もうさらわれて乱暴されちゃうんじゃないかって思ったときにね、その人がひとりでそいつらみんな追い払ってくれて、家まで送ってくれたの。

それでね、今日またその人を見つけて、思い切って後をついてきちゃったの。
そしたら・・・」



「この寮に入ったのね。」



「そそ、そういうことなの。
私とにかく、まずあの時のお礼をいって、できればもっとあの人のことを知りたくて。
ねぇ、お願い!
なるみしか頼めないの。

できれば3~4日ここに泊っちゃだめ?
その間に最低でも接触したいから。」



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