虹が見えたら
なるみは勝手に部屋に誰かを泊めることは禁じられていることをさやかに説明した。
しかし、泊める手続きを管理人室に届ければ、真樹にさやかを会わせることはできる。
まずはお礼をいうことが先決だということでさやかに納得してもらったのだった。
そして翌日の朝、さやかは始業前に管理人室に行った。
「おはようございます!」
「はい、おはようございます。
あれ、始業前にめずらしいね。誰に用があるのかな?」
「あ、あの・・・もしかして管理人さんですか?」
「ええ、そうですけど。」
「ええっ!違うじゃない・・・。
なるみが管理人さんだっていうから・・・。もう、どうしよう。はずかしい。」
真樹は真っ赤になっているさやかに優しく事情をきいてみることにした。
さやかはなるみに伝えたとおりに真樹に説明した。
「その男って、ぶっきらぼうな話し方をして手の大きな人じゃなかった?」
「は、はい。そうです!
ここにおられるんですか?」
「ああ。そいつは寮の食堂でシェフをしている。
それから、ときどき僕の仕事を手伝ってくれたりね・・・。
でも、僕はここの管理人なんでね。
生徒さんとうちのスタッフを2人っきりで会わせることはできないんだ。
お礼をどうしても言いたいなら、僕も同席させてもらうけどそれでいいかな。
それと君もひとりじゃ困るだろうから、なるみちゃんを呼んでくるよ。」
真樹がそう言って管理人室を出ようとしたとき、なるみが走って飛び込んできた。
ちょうどドアが開いて勢い余ったなるみは真樹の真正面に突っ込んでしまったが、真樹が胸と腕で受けとめたため倒れずに済んだ。
クスクス笑いながら真樹は2人を食堂に案内したのだった。