虹が見えたら
伊織の素顔

3人が食堂に入ると、掃除をしている伊織がいた。

伊織は突然の来客に少し驚いた顔をした。



「それで?」


「あの、どうしても助けていただいたお礼を言いたくて。」


「ああ。いえ、どういたしまして。」



その後に沈黙が続く。
予想はしていたとはいえ、さやかはだんだん顔をこわばらせているのがなるみにはわかった。


「伊織さん!あの、伊織さんってオーナー以外にお付き合いしている女性はいますか?」


なるみは、冷たくなった空気を和らげたい気持ちで質問を伊織に投げかけた。


「いないけど。」



なるみとさやかは顔を見合わせて『ヤッタ!』と頷きあった。


「あの・・・伊織さんのお時間のあるときでいいんですけど、また訪ねてきてもいいですか。」



「嫌だね。個人的にここの生徒には近づかないのがルールだ。
それに、空き時間はない。」



「えっ、でもこの前、町で助けてくれたじゃないですか。」



「仕事の用事で通りがかっただけだ。
他にはとくに理由はない。
これから買いだしと仕事で出かけるから、用が済んだのなら早く登校しろ。」


「そ、そんな言い方って!」


なるみは思わず伊織にくってかかろうとしたが、真樹に制されてしまった。


「なるみちゃん、ここはどういうところですか?」


「え、ここは学校の女子寮です。」


「僕たちは寮を提供している会社のスタッフです。
立場を考えてくれませんか?」
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