虹が見えたら
さやかは得意げに言った。
ペンダントが小型カメラになっていて、映像が自宅に転送されているというのだ。
さすがに、共犯がいるとなると真樹はさやかの要求をのむしかなかった。
狙いが伊織と付き合いたいだけだとわかっていて、なるみの犠牲は大き過ぎる。
そう思った真樹は学校へ便宜をはかるとさやかに言った。
するとさやかはさっきまでの恐ろしい形相は消え、なるみに謝った。
「ごめんね。痛かった?
私ほんとに本気なの。
伊織さんにとことん嫌われたら諦めるけど、何もしないで引き下がるのだけは嫌だったの。
私を助けてくれたときの伊織さんがどうしても忘れられないの。
これ、私の予備の服。
ここまでやらなきゃいけないとは思ってなかったけど、いちおう覚悟はして持ってきたのおわびに着てちょうだい。
下着代はまた弁償するから、これだけ着れば部屋にもどれるわね。」
「さやか・・・ここまで準備してたの。」
さやかは真樹から一筆しっかりと約束事を書いた紙を取って帰っていった。
なるみもさやかの服をきて切られた自分の服を持って帰ろうとすると、真樹に後ろから抱きしめられた。
「ごめん、人質にされてしまった。
僕がうかつだった。まさか、女子高生がここまで仕掛けてくるなんて初めてだから。
ペンダントのカメラは回収したから処分するよ。
でも彼女がここへ越してきたら、何か起こされそうだね。
学校へ便宜をはかるなんて・・・やったらきっと、僕と会社ごと追い出される。」
「そ、そんなっ!
そんなことになったら、みんな困ってしまいます。
私だってまた住むとこがなくなって・・・」
「大丈夫。もしそうなったらなるみは僕の家から通わせてあげる。」
「でも・・・あっ!そうだわ。
真樹さん、便宜をはかって。
学校にじゃなくて・・・伊織さん本人に。
それだったら誰も困らないはずよ。
伊織さんにお願いすればいいんだわ。」
「あ・・・そっか。
狙いはあいつなんだから、伊織にしばらく彼女と付きあってもらえば解決か。」