6月の蛍―宗久シリーズ1―
もう………………いい……。








誰も、助けに来てくれずとも……………。







このまま…静かに…誰にも知られずに………一人で………。











赤い鮮血は、徐々に雪の上に広がっていくのがわかる。





このまま、雪が全てを奪ってくれる。




体温も、鼓動も……掻き消してくれるに違いない。












静か………とても、静か……。










雪の音が聞こえそう。







綺麗………とても綺麗…。







もう、何も考えずに、このまま眠ろう。



雪の美しさだけを見つめて、このままここで眠ろう。




それが、今の私にできる、全て…………。















あなた…………。





あなたはもう、知ってしまった事でしょう。




嘘ばかりの私を、罪の一切全てを。





私を、恨むでしょうか。






浅はかで愚かで、醜い………隠し通せると思っていた、汚れた私の姿を。





恨むのでしょうか。












流れた涙が、頬の下、雪を溶かしていくのを感じた。
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