6月の蛍―宗久シリーズ1―
人の思惑は人を翻弄し、また偽りは、心を凍らせる。

真意を、失わせる。





いつの世も人は、そうしてもがいで生きていくものなのだろう。



それはきっと、全ての人間がそうだ。







そうして、人では無いものが見える僕は、こうして自分の役目を、見出だしていかなくてはならない。



それが、あまりにも悲しい事でも。









咲子さんの記憶は、あの人の想いは、あまりにもすれ違い過ぎてやりきれなくなる。




それはまた、僕にも心がある証なのだろう。












「どうしたのですか?」

「え?」

「なぜ……あなたが泣いているのですか」







咲子さんに言われ、僕は違和感を感じる頬をなぞる。






指先に吸い付く、透明な……。








同調が表面に出たのか。






僕は笑う。






「僕にもわかりません」







笑う僕につられたのか、咲子さんもまた微笑する。






その美しい表情に、白い肌に、縁側からの月の光が反射して、咲子さんを包み込む。






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