流星ラジオ
目の前にある料理はあの時と同じでも、並ぶ皿はひとつだけ。
自分の誕生日ぐらい、こうやって彼との思い出に浸ろうと考える自分はしつこいだろうか。
一口シチューを頬張れば海月の顔が鮮明に浮かんできて、温かい湯気が涙腺を刺激する。
それでも彼女は泣かなかった。
どうしても泣けなかった。
海月は今どこで何を食べているのだろうか。
彼が生きていることを前提として浮かんだ考えは、まとまることなく霧散していった。
カレーよりも優しい味は、今は苦しいだけだ。
長い間待ち続けて、彼がここを出ていった理由を知ろうとする。
思い当たることがある。
あの日あの時、自分の言動がきっと彼を傷つけた。
だから彼は、ここにいない。