流星ラジオ


悪気はなくとも自分のコンプレックスを指摘されたことが、羽美の冷静さをさらっていった。

長年一緒にいたせいで、相手に対する思慮が欠けていた。

自分の要領の悪さと彼の要領の良さを比較して、イライラしていた。


すべての原因は、些細などこにでもあるようなことだったのだ。

けれどどんな理由があろうとも、それだけは言ってはいけなかった。


それは彼の顔を見ても明らかだった。

明らかに表情を曇らせてうつむく彼。


ごめんと素直に謝ることができたら、どれだけよかったか。

けれど彼女は怖かったのだ。


――ごめんじゃないよ…。

その言葉がそのまま自分に跳ね返ってきそうな気がして。


< 48 / 85 >

この作品をシェア

pagetop