月物語 ~黒き者たちの宴~
―夢で見たものと同じ。
ぞくりと背中を悪寒が走った。
『大丈夫―――。』
夢と同じ様に、脳内に声が響く。
「ねぇ、この中にち院がいるのかしら?血に飢えた獣ではなく?」
「……………。」
男は顔に似合わず、間抜けな顔になった。
何のことか必死に考えを巡らしているらしい。
言った礼は、はっとなる。
「あ…、いや…」
―しっ、しまった。
思わずとんでもないことを口にしてしまった。
相手にとっては、どう考えてもトンチンカンなことを言っている。
「えっ、えと…、その…、なっ何でもないから早く扉を開けて頂戴。」
宋春は礼の意図がくめぬまま、慌てて扉を開けた。