月物語 ~黒き者たちの宴~



少女は暫く美しい『花』が苦悩するのを楽しんだ。



「実はね、私が危険を冒してまでここに来たのには、理由があるの。
あなたの助けになると思ってね。」



少女が微笑む。



「どっどういうことです。」



「あの方が助かる方法があるわ。」



『花』の目が見開く。



―そんな方法が…



少女は淡々と告げた。



「選べばいいのよ。
あの方か、自分か。」



花は目を見開いた。



―そうだ。
選べばよいのだ。



『花』が気付いたことを確かめると、少女は静かに消えた。



―あぁ。
何を迷っていたのだろう。
簡単なことじゃないか。



今、陽春は、王の花になることをやめたのだった。




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