月物語 ~黒き者たちの宴~



礼を護るためだけに情報を隠すのではない。



王たる存在と認められていないからだ。



東師に至っても、のらりくらりと交わされ、結局何もわからず終いだった。



いつものことには違いないが。



その晩から衛兵の姿が増えた。



少なからず、慌ただしさを感じる。



―まだ犯人が捕まっていないんだわ。



今日は部屋から出してもらえないらしい。



案の定、彼がやってきた。



「待ってたわ。」



陽春は部屋に入るなり、平伏した。



「主上は賢くあらせられる。
どうか、何もお聞きくださいますな。」



皆で何を隠そうとしているのだろう。



だが、彼にそう言われるのは、腹が立つ。



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