月物語 ~黒き者たちの宴~
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彩夏は駆けに駆けた。
―主上、一体どこに。
「彩夏殿。」
平当の呼びとめに、崩れるように倒れこんだ。
「一体どうなされた。」
それを慌てて抱きとめる。
暫く呼吸を整えると、汗に濡れた顔を上げた。
「しゅ、主上が、いなく、なって。」
「何!
衛兵たちは!?」
彩夏は首を振った。
―何ということだ。
あの王は…
怒りの溜息が出そうになったのを堪える。