月物語 ~黒き者たちの宴~
部屋の中は薄暗く、仄かに何かが光っていた。
武則天らしき人影が見える。
中に入りその影に近づき、腕を組んで挨拶を述べた。
「土の君様。
今回のお心遣い、傷み入ります。
このご恩、赤国を豊かにし、必ず天にお返しいたしましょう。」
礼の変貌ぶりに、武則天は一瞬困惑の表情を浮かべたが、すぐに微笑んだ。
「浅い日であったが、よう成長されたのう。
武則天様と呼ばれた日が懐かしい。」
武則天は笑った。
武則天と呼ぶのは恐れ多いため、「土の君」と呼ぶのが習わしである。
武則天は、礼の頬を撫でた。