月物語 ~黒き者たちの宴~
「主上は私が何か知っているとお考えなのですね?」
「事実そうだろ。」
いつもと変わらないようで、心なしか楽しそうに見える。
「主上は二十二になられるのじゃったな。
お若いのに、なかなか鋭いですな。」
「いえ、東老師には到底かないませぬ。」
東師が声を上げて笑った。
「では、引き下がってもらえますかのう?」
「“鋭い”とおっしゃいましたよね?
何かあるのに引き下がれません。」
東老師は片眉を上げて、またにこにこ顔に戻った。
「私は政には介入できない。
それはおわかりでしょう?」
老師の役目は教育係だ。
最も王に近い存在であるが故、政ごとの介入は禁じられている。