万華鏡

6.後悔



次の日、宮下さんと資料整理をしていると、

「谷原さん、随分楽しそうですねぇ。昨日、何かいい事あったんですかぁ?」

と言ってきた。

「あ…あれ?そう?特に何もなかったけど。」

「昨日も関口さんと帰ったんでしょう?羨ましいですぅ。」

「何で知ってんの?」

「だって昨日改札で別れた後、トイレに行ったんですよ。出てきたところで関口さんとバッタリ会って、『谷原さんは?』て聞かれて。先にホームに降りたと言ったら、慌てて走って行ったんですもん。」

何も追いかけて来なくてもよかったのに…。

「ふーん。そうだったんだ。」

「あーあ、谷原さんが相手じゃ勝てないや。」

「何が?」

「だって谷原さんて大人な雰囲気で、失敗しても怒んなくて手伝ってくれるしぃ、私には理想の先輩ですよぉ。きっと関口さんは谷原さんの事…。」

宮下さんのその先の言葉は聞きたくなくて、誤魔化すように言葉を被せた。

「宮下さん、甘いわよ。試用期間が終わったら本性剥き出しになるから、覚悟しといて。」

「えー!?じゃあ今はお面着けてるんだ。」

「そうそう。」

キャハハ…、と笑いながら整理を終えると丁度昼休みになった。




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