万華鏡


それが嫌で、

「あんたとなんか帰らないから!!」

千尋の傘を奪うとバタバタと走って帰ってしまった。



先に家に着いていた私は、千尋が帰って来るのを窓からそっと見ていた。

ずぶ濡れでとぼとぼと歩いている姿を確認すると、後悔しているのに素直になれない自分がいて、カーテンをシャッと引いて見ないようにした。

千尋が悪いんだ。あんな所で『一緒に帰ろ。』なんて言うから。私は悪くない。

…本当は千尋と一緒に帰りたかったのに。囃し立てられた事が恥ずかしくて、千尋を傷つけて、ごめんも言えなかったんだ。

それでも千尋は次の日にはケロッとして、『理佳子ちゃん、理佳子ちゃん』て、笑ってた。




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