失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
「やぁ!」
「やぁ!」
“やぁ!”なんて普通の男なら似合わない言葉も、彼が言うと似合ってしまう。
それが金井武だ。
あたしは待ち合わせ場所ですでに待っていた武を見かけて、小走りで駆け寄って……、そんなあたしに気が付いた武の挨拶に思わずそっくりそのまま返してしまった。
「さぁ、お茶でも飲みながら話そうか」
「あ、うん」
駅前で待ち合わだったから、場所は移動するだろうとは思っていたけど……
武に連れていかれたのは特別お洒落なわけでも、料理が美味しいわけでもなさそうな小さなお店。
静かなのだけが取り柄みたいな。
「静かなほうが落ち着いて会話できるだろ?」
「そうだね」
確かに。
武の容姿は人の目をひきつける。
ゆっくり静かに話したいなら、失礼だが、お客の少ない店に限る。
「……で、何の話?」
「まぁ、コーヒーでも飲んでから、あ、亜美はミルクティ派だったね」
こうやって話を後回しにするのは気に食わないけど、
あたしの好みを忘れていないってとこは昔と変わらない。