失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
カバンから大きめのポーチと鏡を取り出した。
「大雅!コテの電源入れといて!」
「あ?何で俺が?」
「いいから!」
「……ちぇ、」
文句を言いながらも、大雅はコテを近くのコンセントに繋いでくれた。
その間にあたしは深瀬亜美を完成させなければならない。
もともと薄くではあるが化粧はしてある。
これを少し濃くするだけで相当変わるのではないだろうか。
陽達が見ているのも関係なしに、亜美はポーチから化粧品を取り出しては塗り、取り出しては塗りを繰り返した。
「す、すげぇ」
たいしたことはしていない。
ナチュラルだったつけまつげを少し束感のあるものに替え、マスカラを多めにつけ、チークをピンクからオレンジにかえ、リップを塗り直しただけ。
だいたい10分。
化粧品を手早く片付けて、亜美は髪を巻きはじめた。
「くるくるかわいいな、亜美に似合ってる」
「ありがとう」
颯太の言葉に返事をして、亜美は陽からワックスをかりて髪につけた。
「――――よしっ、完成」
化粧だけで外見は完璧に深瀬亜美。
あとはスイッチを入れるだけ。