失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿
安心した……
なんてこと絶対に大翔には言えない。
そんなこと言ったら調子に乗る。
大翔が出ていってすぐに大翔のお兄さんが入ってきた。
多分入り口で待ってたんだろう。
「……大翔のやつ、失礼なこと、しませんでしたか?」
これだ。
この様子をうかがうような態度、言葉が嫌だ。
亜美は慣れている。
誰からも媚を売られても受け流せる。
そのはずなのに、今は猛烈に腹が立った。
この態度が、あたしの友達を傷つけている、そう思っただけなのに。
「先日、大翔さんに金井家のパーティーに参加していただいたのはご存知ですか?」
知らないわけないじゃん。でも、わざと聞く。
「それはもちろん。金井さんにホームパーティーに呼んでいただくなんて光栄です」
「大翔さんに、いや、大翔に、あんた何言った?」
雰囲気、言葉遣いが急に変わった亜美を見て、信じられないような顔をしている。
「……っえ?」
「一応、だいたいのことは聞いてます。“仲良くしといて損はない”ってやつとか」
初めて彼の顔が少し歪んだ。
ちゃんと自分がしたことを思い知れ。