失恋少女とヤンキーと時々お馬鹿



安心した……


なんてこと絶対に大翔には言えない。


そんなこと言ったら調子に乗る。


大翔が出ていってすぐに大翔のお兄さんが入ってきた。


多分入り口で待ってたんだろう。


「……大翔のやつ、失礼なこと、しませんでしたか?」


これだ。


この様子をうかがうような態度、言葉が嫌だ。


亜美は慣れている。


誰からも媚を売られても受け流せる。


そのはずなのに、今は猛烈に腹が立った。


この態度が、あたしの友達を傷つけている、そう思っただけなのに。


「先日、大翔さんに金井家のパーティーに参加していただいたのはご存知ですか?」


知らないわけないじゃん。でも、わざと聞く。


「それはもちろん。金井さんにホームパーティーに呼んでいただくなんて光栄です」


「大翔さんに、いや、大翔に、あんた何言った?」


雰囲気、言葉遣いが急に変わった亜美を見て、信じられないような顔をしている。


「……っえ?」


「一応、だいたいのことは聞いてます。“仲良くしといて損はない”ってやつとか」


初めて彼の顔が少し歪んだ。


ちゃんと自分がしたことを思い知れ。
< 335 / 509 >

この作品をシェア

pagetop