ありのまま、愛すること。
父は典型的な“昭和の”社長で、朝は遅く起きての重役出勤。

帰宅はいつも夜中で、12時を回るころに帰ってきます。

接待も多く、週末はゴルフか麻雀。


この父の生い立ちは少々複雑なのです。

父の母、私の祖母は私が3、4歳のころから自宅にいっしょに住み込むことになりましたが、この祖母は、私の父─つまり実の息子を養子に出していた人です。

祖母は、四国の名家の息子と駆け落ちした女性で、二人の子どもを出産した後に、この名家から金を渡され、別れさせられたのだとか。

当時はいまにも増して、シングルマザーが生計を立てていくには難しい時代。

祖母は知り合いから薦められ、横浜市南区の貧しい石屋である渡邉家に、私の父を養子に出したのです。

私の「渡邉」という姓は、そこに起因しています。
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