ありのまま、愛すること。
しばらく待ち、父が突然、その病室に入っていった。

父はなにやら、医師に話しかけていた。

すると少しして、先ほどまで力いっぱいに、母の胸がつぶれてしまうほどに押さえ込んでいた医師たちの手が、ゆっくりとはがされた。

すると、父が踵を返して、病室から出てきた。

ガックリと肩が落ちていた。

長身でスラッとした父の、丸まった背中を私は初めて見た。

そしてしぼるようにつづけた父の言葉を、私はいちばん聞きたくなかった。

「いま、お母さんが亡くなった……。急に容態が悪くなったって先生が言っていた。先生は一生懸命、お母さんを生き返らせようとしてくれたんだが、あれ以上したら、お母さんの体がかわいそうだった……。お父さんも、お母さんの最期の言葉を聞くことができなかった……」

私の目から大粒の涙があふれ出した。

泣き叫んだ。

「お母さん、お母さ~ん、死んじゃいやだよう、死んじゃいやだよ、お母さ~ん」

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