ありのまま、愛すること。
「やっぱりお母さんは、僕のことをいちばん大事に思っていてくれた。だったら、お母さんの分まで、僕は強く生きなければいけないんだ」

そして父に言いました。

「僕、頑張るから。だって、お母さんが天国でずっと、僕のことを見守ってくれているんだものね」

私は自分でも、声に力が入っているのがわかりました。

その日以降の私は、本来の明るさと力強さを取り戻した気がします。

ずいぶんと落ち込んでいた学校の成績も、一気に挽回しました。

グローブを投げてしまっていた野球も、ふたたびボールを握り締め、グラウンドに向かうことになったのです。

妄想もなくなりました。

母がいなくなってしまったという思いを、この段階なりに断ち切った私は、
「お母さんは見守ってくれている」

と思えるまでに、心が回復していたのです。
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