ありのまま、愛すること。
家にある財産価値のありそうなあらゆるものが、数日するとごっそりと家から消えてしまうことを覚悟していましたが、結局そうはなりませんでした。

父が、友人から多額の借金をして会社を倒産させずに清算したからです。

結果として「夜逃げ」はしませんでしたが、毎日のおかずに困るほど生活は激変していきました。

私は空に向かい、つぶやいていました。

「お母さん、僕は生きるけど、生きながらお母さんに会える方法ってないのかな……」



父の清算はわが家のすべての現実を変えるものとなりました。

しかしながら私にとって、母がいないことに比べれば、その苦しさは比ではなかったのです。

そのころまでに、ようやく「お母さんは見守っていてくれる」と自分に言い聞かせ、前向きに生きようと思えていた私は、ここでふたたび、母の不在を認識するのです。

それを解決してくれるものとの出会いは、もう少し後のことになります。
< 47 / 215 >

この作品をシェア

pagetop