午睡は香を纏いて
カインの住居となっているそこは、外観は大きく作られているように見えるのだけど、中に入って見ると、異常なほど狭い。

沢山の書物が居住スペースの大半を占めているせいだ。

ベッドと机、ほんの少しのスペースのみ残して積み上げられた書物の山を見ると、いつかカインは紙の雪崩に巻き込まれるんじゃないかと思う。

本人は全く危機感を抱いていないようで、一番下に埋もれた本を乱暴に抜き取ったりするので、見ているほうが心臓に悪い。

今日は天気がいいし、外で勉強しよう、って言おう。

青空が広がっているのを確認して、木戸を叩いた。返事がないのはいつものことなので、数秒してから開けるとカインは机に向かって書き物をしていた。
床に沢山の書き損じがあるところを見ると、数時間はこの調子だったに違いない。


「おはよう、カイン。朝食は?」

「食べてない」

「そう思って持ってきた。鶏の燻製と卵のサンドイッチ。お昼の分もあるよ」


カインは背中を向けたまま、机の空いたスペースをとんとんと叩いた。ここに置けということらしい。

バスケットから朝食分の包みを取り出して、置く。

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