午睡は香を纏いて
「はい、どうぞ。茶器使っていい? お茶入れるから」

「ちゃんと洗えよ」


見ればすでに茶器が出ていて、それは昨日あたしが帰り際に淹れてあげた時と同じ位置にあった。
昨日と違うのは中身が飲み干されていて、代わりに底に茶色い染みが残っているということだけ。


「もう。せめて桶に浸けときなよ」


返事はなく、包みを開けるがさがさという音がした。
片手でそれを食べながら、ペンを握った手はそのまま、紙の上を滑らせている。
その姿にため息を一つついて、茶器を洗いに母屋へ向かった。


お茶を淹れて離れに戻ると、多めに作ってきたサンドイッチは全て、カインの胃の中に納まっていた。
空の包みを見て、よしよし、と頷く。
今日のはなかなかいい出来だったと思っていたんだ。


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