午睡は香を纏いて
「泣くな、よ。困る」


手を差し出そうとしたカインが、それを引っ込めた。
再び差し出して、引く。あたしの扱いに悩んでいるのだろう。

こういう風に迷惑になるから、言うまいと思っていたのに。
感情に任せて口走ってしまった。
情けなさに、涙が止まらない。


「カサネ」

「ごめ、ん。帰るね。もう、一人にして。おやすみなさい」


俯いたまま言って、その場を離れた。
せめて泣き声は漏らすまいと唇をぎゅ、と噛んだまま、振り返らずに家まで歩いた。
 


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