午睡は香を纏いて
***


ほとんど眠れない夜を越すことになった。
乱れた心は眠りにつけるはずも無く、あたしはただ横になって、何度も寝返りを打っていた。

時間が経てば、思うことは反省ばかり。

何であんなこと言ってしまったんだろう。カインはきっと軽口のつもりで言っただけだったんだろうに。
それを真正面から受け止めて、興奮して泣いて。

きっとカインに呆れられたに違いない。
いや、呆れた、なんてものじゃないか。

サラはもういない、と小さく呟いた表情は悲しそうだった。
あたしはカインを傷つけてしまったんだ。

あんなこと言うつもりはなかったのに。
 
カインに嫌われたかな。
あたしが嫌になっちゃったかな。

あの少し前に見せてくれた笑顔は、もう見ることができないかもしれない。
あの時は怒りが全面に出てしまったけど、でもちょっと嬉しかったのに。

そっと耳に触れてみる。
そこに当たり前にある耳綸をなぞり、目を閉じた。
カインと少し近づいたと思えば、こんなことになってしまった。

あたしはどうしていつもこうなんだろう。


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