午睡は香を纏いて
「っと、悪い」


レジィがあたしを離して、体をずらした。目の前に本を数冊抱えたカインの姿が現れる。
その眉間にはシワが刻まれていて、唇もへの字に曲げられている。

やっぱり、怒ってる……。
ぎゅう、と心臓を掴まれたような痛みが走る。


「あ、お、おはよう、カイン」
「オハヨ」
 

挨拶を即座に済ませて、レジィとあたしの横を素通りして部屋を出て行った。


「ね、ねえレジィ。カイン、機嫌悪い、よね?」

「そうか? いっつもあんなモンだろ」

「ええ? そうかなあ」


出していた机に本を広げだしたカインの姿を窺う。
やっぱり機嫌悪そうな雰囲気纏ってる。

どうしよう。
まずは、昨日はごめんなさいと言うことから始めようか。
ああ、でも声をかけにくいよ。


「それより、カサネ。サラの両親のところに行くって?」


躊躇っていると、木戸に寄りかかったレジィが口を開いた。


「……え、あ、うん。何か思い出すかもしれないっていうなら、行こうと思って。それに、気になることもある、し」

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