午睡は香を纏いて
浮かれてとか、ぼけぼけとか、突っ込みたいところがないわけではないけど、言えない。
初めての場所に心奪われていたのは事実だし。

人攫いは怖いので、セルファの服の裾をぎゅ、と掴んで歩きだした。
はぐれない程度に、辺りに視線をやる。

しかし、騒がしいくらいに、賑やかだな。
行き交う馬車からは馬の嘶きと、ガラガラという車輪の音。
物売りだろうか、「採れたてだよ!」とか「今なら安くしとくよ!」なんて声もそこかしこからしている。
子供の笑い声に、泣き声。母親の叱咤するような声も聞こえる。

すれ違う人は容姿も様々で、髪の色だけでも、金、黒、赤。
白かと思えば、銀色という人もいた。
瞳も、黒、青とここまではよかったのだけど、驚くことに緑と紫という色があった。


こっそりとセルファに訊けば、緑や紫の瞳はハイナムトス大陸の人に多い色なのらしい。
通りでオルガでは見かけなかったわけだ。
 
「カラコンじゃないんだ」と思わず呟いたら、セルファが食いついた。
説明すると、非常に興奮していた。


それから人ごみをしばらく歩いて、中央市場というところへついた。
そのまだ先に港があって、そこから流れてきた品物が売買される場所なのだそうだ。

木柱に布を張っただけの簡易な店がずらっと並び、様々な品物を陳列している。
さっきの大門前も活気があったけど、確かにこちらのほうが格段に人が多くて、賑やかしい。

人の流れに乗るセルファにくっつきながら店先を眺める。
見たことのない食べ物や、魚。
芳しい香りを放っている、奇妙な形をしたフルーツのようなものもある。

テーブルと椅子がたくさん並べられたところは料理屋らしい。
美味しそうな湯気を立ち昇らせる大皿を持ったお姉さんが、忙しそうにテーブルの間を走り回っている。
ちらりと見れば、見たこともないくらい大きい海老がどーん! とお皿に乗っかっていた。
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