午睡は香を纏いて
「ゼフ! こっち!」


セルファが手を振ると、カインが少し早足になった。どうやら何か手にしているようだ。


「迷い子になりそうだった? ゼフ」

「そんなんじゃないさ。ユーマ、手を出せ」

「へ? はい」


言われるままに手を差し出せば、カインはそこに小さな袋を乗せた。

「中は、ルドゥイという果実を干したものだ。頭の芯の痛みや揺らぎを取ってくれる効果がある。必要なときに口に入れろ」

「え? ええと」

「ああ、カサネがさっきへばってたからか」


セルファが手の平を覗き込んで言った。
もしかして、あたしが転送後にダウンしたから?
確かに、頭痛とめまいがしたっけ……。


「試しに食ってみなよ。結構美味いぜ、それ」

「あ、うん」


袋の口を縛っていた紐を解いて、中身を手の平に溢す。
ころころ、と転がり出たのは鮮やかなオレンジ色の粒。形や大きさは、レーズンによく似ていた。
一粒摘んで口に入れたら、柑橘系の甘酸っぱい香りと味がした。

あ、爽やかだし、確かに頭痛に効きそう。それにこの味、好きかも。


「おいしい」

「そうだろ。オレも一口くれ」


あーん、と口を開けたセルファにも一粒。
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