午睡は香を纏いて
「そっちって、市場から外れるんじゃないんですか?」

「いや、いいんだよ、こっちで。じゃ、行こうか」


店と店の僅かな隙間を通って、活気ある場所を離れた。
簡易な店の奥はレンガの建物が建っていて、セルファとカインはその建物の隙間を縫うようにして進んでいく。
市場の喧騒も聞こえなくなって、周囲の建物がどんどん古ぼけていく。
一体どこに行くんだろう、と不思議に思っていると、広い通りにでた。


「あ。市場につい、た、の?」


セルファの背中越しに通りに視線をやって、言葉を失った。
そこはさっきとは様相の違う、どこか暗い場所だった。

土が露になっていて、でこぼことしている。
さっきの整地された地面とは大違いで、濁った水溜りが至るところにあり、端には雑草が根を張っていた。

店は並んでいるけれど、木柱に渡された布は元の色が分からないくらいにぼろぼろになっていて、何より土台となるべき柱が大きく傾いていた。

並んでいるものと言えば、古びて色あせた衣服であったり、干からびた野菜であったりと、品物とは言いがたいものばかりだ。
店主らしき人は顔を俯け、肩を落として陰鬱な様子。
道行く人も少なく、いても皆表情が硬い。着ているものも、着古したような感がある。


「え? ここ、一体何?」


さっきまでの様子とは全く違う。そんなに歩いた覚えはないのに、この差異は何なの?

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