午睡は香を纏いて
いつもの淡々とした口調で、けれど有無を言わさない強さでカインは言った。
これ以上何を言っても、カインは聞いてくれないだろうと分かった。


『せっかくここまで来たんだ。カインもオレも、できる限りのことはしたいんだよ。
充分気をつけるから、カサネは安心して待ってていいから』


唇を噛んだあたしに、セルファが宥めるように言った。
腕に縋っていたあたしの手をゆっくり解く。


『そうだ、カサネも約束しなよ。ここで大人しく待ってるってさ。君までうろちょろされたらたまんないし』

『そ、それは約束するけど……』

『うん、じゃあオレたちも約束。絶対に帰ってくる』


花びらを揺らして、セルファは明るく笑った。
こんなふうに笑顔を向けられたら、ごねられなくなちゃうよ。


『じゃあ……待ってる』


しぶしぶ頷くと、よし、とセルファが立ち上がった。


『一緒に出るか、カイン。なるべくカサネを待たせないように気をつけようぜ』

『ああ、分かった。……行ってくる。この建物から出るなよ』

『はい』

『ああ、そうだ。カサネ』

『なに、カイン?』



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