午睡は香を纏いて
「ごめんなさい……」


忘れているというのなら、思い出したい。
あたしが忘れていることで、悲しい思いをしているこの人のためにも。


「カサネは悪くない。悪いのは、記憶がないっていうのは何回もカインから聞いてたのに、信じなかった俺の方だから」


ふるふると首を振って、レジィは続けた。


「こうしてまた出会えて、話ができる。名前を呼んでもらえる。
それだけで十分なんだ。
俺とサラってさ、結構仲がよかったんだぜ? だから、これからまた仲良くなろう?
覚えてなくていいんだ。また一から始めたらいいだけだもんな」

「う、あ」


な? とにっこり笑われて、その笑顔に赤面した。
この人の笑顔、やっぱりかわいいい。
髪と同じ金色の眉が下がって、きらきらした瞳がす、と細くなる。
大きな口は口角がきゅーっと上がって。綺麗な顔立ちをくしゃりと崩した顔は、愛嬌がある。


「どうした、カサネ?」

「え? いやその。あ、あの、レジィって、いくつなんですか?」


可愛いなんて思ってしまったけれど、レジィは見たところ、あたしよりいくつか上に見える。さっき、あたしのことを年下と言っていたけど、どれくらい年の差があるんだろう。


「二十二だよ」

「はー、若くみえますね」

「マジ!?」


何気なく言った言葉に、レジィは過剰に反応した。


「え、それってガキっぽいってこと? 俺、幼い? 頼りなく見える?」

「あ、いや、そこまでは、ない、ですけど」


見た目は確かに年相応。でも、笑顔の邪気のなさが若く見せてるな、と思っただけだったんだけど。
しかしそれはレジィにとって気にするところだったらしい。

肩で大きくため息までついている。


「え、ええと、あの、あたしから見たら十分大人の男性ですよ? ただ、その、老けてないですね、とかそういう意味で」

「オトナ!? そう思う?」


きらきらっ☆ と文字表記できそうなくらい、レジィの顔が輝いた。
焦って口からついて出たフォローが、成功したらしい。



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